2023年
12月
18日
|
14:16
Europe/Amsterdam

目指すキャリアの実現にストレスを役立てる方法

読書時間: 4 分

年齢、仕事、個々の状況、健康状態はそれぞれに違っても、誰もが生涯を通じて多少のストレスを経験します。ストレスを目標達成に役立てるには、ストレス管理を効果的に行うことが必須です。

特に多くの時間を費やす職場では、ストレス度が顕著に現れやすいと言えるでしょう。仕事が好きでも嫌いでも、ストレスは常に存在します。それでも、ストレスを適切に管理することで、高い業績を上げ、キャリアの目標や成長、キャリア全体の成功を達成することができます。

キャリアの目標達成に役立つストレス管理

世界レベルのアスリートについて考えてみましょう。彼らは何が自分の能力を最大限に発揮させるのかを理解するために、自分の身体と脳をコントロールする訓練を積んでいます。トレーニングや競技では、身体にも脳にも大きなプレッシャーがかかります。

陸上で活躍したケリー・ホームズのようなアスリートは、ストレス管理で絶妙なバランスを維持する方法をマスターしています。彼女は次のように語っています。

「アドレナリンは必要だけれど、多過ぎると迷走してしまう。」

スキルとして身体的なものと精神的なものの重要性はどの程度か、という質問に対しては、2割・8割の配分になると彼女は即答しました。「2004年のオリンピックの800メートル決勝では、上位4人の間の差は0.2秒でした」「才能はどの選手もほぼ同じ。みんな速く走れて、みんな強くて、お互いにタフだったんです」 だから、勝利の80パーセントは心の中にあり、不安とプレッシャーにどう対応したかで差がついたのだ、と。

Kelly Holmes, High Performance by Jake Humphrey and Prof Damian Hughes.

ケリー・ホームズが世界的なアスリートになり、キャリア目標を達成し、オリンピック選手として成功することができたのは、ストレス管理の成果だったのです。アスリートになる必要のない私たちも、脳を鍛えることは可能です。

キャリアを成功させるために、ストレスを上手にコントロールする

ストレスを管理して落ち着きを取り戻す方法は誰でも訓練によって身につけられます。一度覚えてしまえば、目指すキャリアの実現が明確になり、集中することができるようになります。

ストレスを管理できないままでいると、健康や幸福感に害を及ぼす可能性があります。特に、長期間にわたるストレスや不安は弊害が懸念されます。

挫折や困難に前向きに対応するスキルを身につけると、職場でも家庭でも、全体的な幸福感と回復力を高めていくことができます。そして、この先も逆境に対応し、障害を乗り越えて行ける、という自信がついてきます。ストレスは、少量であれば、リスクを取る勇気を出し、飛躍のチャンスを捉え、ポジティブな循環を生み出すのに役立つのです。

ストレス管理で頭が良くなる?

テッドトーク「How Stress Makes Us Smarter」を発表した認知神経科学者のイアン・ロバートソンは、ストレスをうまくコントロールできる人を次のように捉えています。

「より幸せで、不安感が少なく、落ち込まず、賢明である」

また、『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』の著者である健康心理学者ケリー・マクゴニガル博士は次のように述べています。

「ストレスが溜まったら、とにかく気持ちを落ち着けるしかない。逃げろ、と言われますが、これはむしろ逆効果です。ストレスを上手に利用することが大切なのです。」

マクゴニガル博士の研究では、ストレスに対する考え方を改めると、ストレスにより効果的に対応できるようになることが強調されています。

ストレスをポジティブに捉えることのメリット

ポジティブなストレス(ユーストレス)に関する研究によって、ストレス管理のスキルを高めると、以下のようなメリットがあることが明らかになりました。

  • 自分自身を信じ、自分の能力に自信がつく。
  • 成長に前向きになる。
  • タスクや意思決定において、より生産的で効率的になる。
  • モチベーションが高く、意欲的になる。
  • 目標とその達成方法を明確にし、集中することができる。
  • 自分自身と他人に対する期待が高まる。

自分には困難に対処する能力がある、と感じることができれば、殻を破って突き進む力が湧き、目標に向かってこれまで以上に強い決意と明るい展望を持てるようになります。

職場でのストレスを管理するには

例えば、プロジェクトの納期がきつい時や、上司やクライアントにプレゼンをしなければならない時など、仕事で課題に直面しているとしましょう。ストレスホルモンが体に生理的な変化を引き起こし、脈や呼吸が速くなったり、血圧が上昇したりします。そして、筋肉は血糖が行きわたって活性化し、オキシトシンが分泌されて、手助けしてくれる人々とのつながりを求めるようになります。

こういった変化を受け入れて、怖れることなく爽快感として体感できるようになると、気力が高まり集中力が磨かれて、最終的には、目指しているキャリアを実現し目標達成や成功をつかむ能力が向上します。

ストレスをうまく管理すると、仕事面においてメリットが広がります。どこかでストレスを手なづけることを学んだら、個人的な目標、人間関係、家庭生活、地域社会など、人生の他の側面でもポジティブな影響が期待できます。ストレスを味方にして、新たなチャレンジに挑み、視野を広げ、新しい経験を楽しんでいきましょう。きっと人生は豊かなものになるはずです。

ストレスをキャリアの成功につなげるには

1970年代、心理学者でストレス研究家のスーザン・コバサは、企業幹部の根本的な性格特性に着目し、仕事上のストレスが続いているにもかかわらず健康を維持している人と、健康上の問題を抱えるようになった人の比較研究を行いました。

そして特定された3つの保護特性、つまりチャレンジ、コントロール、コミットメントは、ストレスにうまく対処するための効果的な戦略として現代人の思考を支えるとしています。

  1. チャレンジ: コバサは次のように述べています。

「変化をポジティブに感じる人は、環境に対して触媒のように振る舞い、予期せぬ事態に対応することに長けている」

このような人々は、変化を自分の安全を脅かすものではなく、発展の機会としてとらえ、ストレスに伴うエネルギーを受け入れて、それを利用して問題解決にたどり着こうとします。

  • コントロール:ストレスにうまく対処できる人は、恐怖に立ち向かって積極的に舵取りをする傾向があります。人生で経験することは自力でコントロールできるという前提で行動するのです。

ストレスの主な原因のひとつは、問題が手に負えないものだと感じることです。成功をつかむ人は、自分の力で解決できることを現実的に見極めつつ、別の選択肢や可能性を探すことによって、解決策を見出す力を手に入れます。

  • コミットメント: 明確な目的意識があり、人生に本質的な価値を見出している人は、逆境に直面しても、目標に向かって一層力を尽くそうとすることが明らかになっています。

これらの特性を職場で取り入れると、次のような対応ができるでしょう。

  • 前向きに妥協する
  • 分担できるようにして、優先順位をつける
  • 休憩はきちんととり、家庭と仕事のバランスを保つ
  • 手助けを求め、できることとできないことを現実的に考える
  • 完璧主義や過度なコントロールなどの悪い習慣を断ち切る
  • ポジティブ思考で現実的な目標に向かって前進する

ポジティブなストレス管理のためのアイデア

  • ストレスが問題を引き起こしていることを認識し、警告のサインを無視しない
  • 時間管理ツールやマインドフルネスのアプリなど利用できるものを活用し、友人、家族、同僚に助けを求める
  • ストレスホルモンに対抗するために、睡眠と食事を優先して健康を維持する
  • リラックスする時間を持ち、セルフケアを行う
  • 人とのつながりを持ち、孤立感や孤独感を防ぐ
  • 自分の長所や、過去に障害を克服したことを思い出す

ストレスを避けるのではなく、脳の回路を組み直すチャンスとして積極的に歓迎しましょう。それがキャリアの成功にプラスの影響を与え、人生の他のあらゆる側面にも波及するはずです。

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