2023年
12月
20日
|
11:44
Europe/Amsterdam

森林浴とは

読書時間: 4 分

森林浴とは何か、ご存知ですか。近くに森がなくてもできるのでしょうか。日本発のこの習慣から、どのような効果が得られるのでしょうか。森林浴ガイドの資格を持ち、自他ともに認める自然愛好家であるリサさんに、森林浴についてお話を伺いました。

それではリサさん、あなたが森林浴を知ったきっかけは何でしたか。

私は子どもの頃から自然が大好きでした。いつも屋外で何かを育てたり、土を掘り返したりしていました。森林浴とは、森の中に浸かるという意味です。雑誌で森林浴のことを読んだのが1年ほど前で、その後すぐに森林浴の本を見つけて、それから夢中になりました。

自然は心の健康に役立ちますし、面白いことに、体の健康にも役立ちます。あまりにも気に入ったので、これで資格が取れないかと思って調べてみたら、ちょうど始まろうとしていた講座がありました。まるで宇宙に一直線の道が開いたように感じました。受講を経て合格し、さらにたくさんの本を読みました。森林浴にすっかり魅了されてしまったんです。

森林浴ではどんなことをするのでしょうか。

森林浴はグループでも一人でもできます。私の案内するグループでは通常2~3時間森の中で過ごします。私は自然の写真を撮るのが好きなのですが、最高の森林浴を体験したいなら、カメラや携帯電話を持って行ってはいけません。意識的にゆっくりとペースを落として過ごし、森の中で五感を研ぎ澄まし、見て、聞いて、匂いをかいで、触れて感触を確かめる必要があるからです。

森林浴をすると、普段は気にも留めないような多種多様な生物や魅力的なものを発見できます。普通に森へ散歩に行っても、友達とのおしゃべりに熱中したり、音楽を聴いたりして、せっかくの自然の素敵な音を聞き逃してしまいがちです。

森林浴のセッションで歩くのは1~2km程度、ごくわずかな距離です。ウォーキングと言えるほども歩きませんので、木々のある緑地が近くにあればそれで充分です。森林浴は小さなことに感謝する体験ですから、広大な空間でなくても構いません。

どのようなアクティビティをするのですか。

五感を開放するためのアクティビティを色々と取り入れています。私のお気に入りは、森の地面に寝そべって、木漏れ日を眺めることです。晴れの日なら陰影まで楽しめて、とても効果的です。

もうひとつおすすめしたいのは傾聴です。15分から20分ほど、ただ静かに座って目を閉じ、聞こえてくる物音に耳を傾けるのです。集中すると、近くや遠くにいる鳥のさえずりが何重もの層をなすように聞こえてきます。また、木の葉の揺れる音や枝のきしむ音、虫の鳴き声、下草の中にいる生き物の動く音などがして、世界は生きているということが実感できます。

視覚を主体として働かせる場合は、森の地面に腰を下ろして、ごく狭い範囲をじっくりと見ることもあります。すると、ただの地面の一部ではない、生き生きとした世界が現れます。昆虫が歩き回り、風が植物や花びらを動かしているのが見えるはずです。様々な模様や影も見えるでしょう。葉っぱが昆虫にかじられている様子や、草木についた色も形も異なる種など、小さなことにも気がつくようになるはずです。コケやシダ、キノコのひだなど「質感」を探してみるのもいいかも知れません。

森林浴のリラックス効果とはどのようなものですか。

仕事中や車の運転中、テレビを見ているとき、私たちは「選択的注意」と呼ばれるものを使っています。これは脳の一部分で1つのことに集中している状態です。しばらくすると集中力が切れてきて、精神的疲労が出てきます。森林浴をすると、選択的注意に使われている脳の部分が休まります。科学者はこれを「ソフト」な刺激と呼び、精神のリフレッシュになることが知られています。私の場合は、クリエイティブな思考がたくさん生まれました。

森林浴に最適な季節はありますか。

アルフレッド・ウェインライトの言葉を借りれば、「悪天候というものはない、服装が適していないだけ」です。適切な服装であれば、一年中いつでも森林浴ができます。冬は防寒して、何か座るものを持っていくだけです。雨が降っていても、土砂降りでなければ面白いですよ。雨の音を聞きながら、葉っぱについた水滴を眺めていると、リラックスできます。

秋は美しい森林浴のできる季節です。葉が色づき、キノコや緑のコケが生えて、森が彩り豊かになるんです。季節ごとに、それぞれの魅力があります。

森林浴をすると、どんないいことがあるのでしょうか。

自然を眺めるだけでも心身の健康に良いという研究報告があります。ある病院で約9年間行われた研究では、入院した患者の半分を木が見える部屋に、もう半分はレンガの壁が見える部屋に配置したところ、受けた手術は同じでも、木を眺めていた患者の方がレンガの壁を見ていた患者よりも早く良くなり、痛み止めの薬も少なくて済んだということです。この研究は刑務所でも行われ、緑を見ることができる受刑者の方が落ち着きがあり、暴力を振るうこともなく、うつ病にもなりにくかったそうです。

メリットをもうひとつあげるなら、自然に対する感謝の気持ちです。これは人類にとって不可欠なことです。自然を愛せなければ自然を守ることはできませんから。最近の育ち盛りは、室内で過ごす時間が長くなっています。コンピュータやデバイスに向かう時間が増え、自然の中で過ごす時間は減っています。植物や鳥、昆虫、木の名前をあまり知らない子どもも珍しくありません。そのまま大人になり親になると、次の世代に自然にまつわる知識や感謝の気持ちを伝えることができないでしょう。森林浴は、自然界とのつながりを取り戻し、自分のための時間を確保する、すばらしい方法なのです。

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